初恋

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中学に進み、近くの小学校と一緒になった。 クラスの数も8クラスと倍近くに増えて、大地と同じクラスになる確率がさらに低くなってしまった。 クラス分けの紙が張られた下駄箱の前で、大地とは違うクラスになって落ち込む私に、今まで話したことの無い、校則違反に近い感じの髪の茶色い女の子から声をかけられた。 「ねぇ、ねぇ、雅って名前の子だよね~?」 突然の問いかけに、私が黙ってうなずくと、 「じゃあ、大地君に片想いしてる子だよね?私も同じなの! 私は、角川夏美(カドカワ ナツミ)。 同じクラスだから、よろしくね♪」 と、明るい笑顔で挨拶をしてきた夏美の顔を、思わず食い入るように見つめていると、少し離れた二人組を指差し、 「あの二人組のね、三つ編みの真面目そうな女の子、佐々木南(ササキ ミナミ)って、名前の子なんだけど、あの子も同じクラスで大地くんに片想い中なの! 」 と、小声で話して、また私に笑顔を見せながら、 「同じクラスに、同じ人に片想い中の子が3人って、すごくない??」 と、夏美は目を輝かせた。 そんな夏美に、 『私が片想い中なのも、あの子が片想い中なのも知ってるなんて…。自分の気持ちもスゴくオープンな子だな…』 と、初めて話す彼女には伝えづらい言葉が、私の頭の中を過った。 そんな私達は、夏美の人懐っこい人柄のお陰で仲良くなり、いつも3人でいた。 そして、いつも3人で大地を目で追っては、ときめく胸の内を語り合い、それが楽しい時間になっていた。 結局私は、大地と3年間同じクラスになれなかった。 夏美は、3年生の時に2人の彼氏が出来た。 そう、夏美の大地への片想いは、2年生で終わりを告げていた。 南の恋心は、3年間続いていたのか…分からない。 3年生でクラスが分かれてから、南とは大地の話をしなくなった。 なによりも…、その頃、大地に彼女が出来たからなのかもしれない。 頭が良くて、生徒会の副会長でテニス部の部長。 皆に優しくて大人びていた、大地の彼女の山下桃花(ヤマシタ モモカ)。 大地に恋をしていた子達は、桃花の存在で、その恋を諦めていた。 そして、私も…。 『初恋は実らず』 これは、正しかった。
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