川崎家

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朝になり、会社とバイト先の店長に電話をかけた。 会社とバイトを、今日1日だけ休ませてもらうことにした。 電話を切って、リビングに降りると、由美がキッチンにいて、 「朝ごはん、食べましょう」 と、言ってくれた。 茜はすでに大学へ出掛けたようだ。 由美と二人の時間は初めてで、雅は少し緊張していた。 テーブルには、お粥と昨日無かったたくさんのフルーツが置かれていた。 「プリンとゼリーもあるからね」 そう微笑む由美に、 「あれから買ってきてくれたんですか?すみません…」 と、雅は申し訳ない気持ちで一杯になった。 由美は、ため息を1つつき、 「買ってくることなんて、たいした事じゃないの。そんなの気にしないで」 と、雅に優しく答えた。 お粥を食べ終えて、プリンを食べている雅を見つめながら、 「今後の話をしていいかしら?」 と、由美は問い掛けた。 雅は、由美を見つめ頷いた。 「大地の言っていた、ここに雅ちゃんが住むことね、おばさん、賛成なんだ」 由美がそう言うと、雅が目を丸くして言葉を失っていた。 その様子を見ながら、 「雅ちゃんママにとって、これからどんな生活が一番いいかまだわからないし、今家を買うとかマンション買うとかは時期早々だと思うの」 由美はそう言って、一呼吸してから、 「でも、今現在の光熱費や、これから出てくる修理費や電化製品の買い換えも必要な築年数を考えると、このまま雅ちゃんが維持していくのは大変だと思うのね」 と、続けた。 「だからね、うちに住みながら、雅ちゃんママのこれからをゆっくり考えたらどうかな?」 と、話した。 そして、少し笑いながら、 「まぁ、雅ちゃんに恋人がいるなら無理にとは言わないけどね」 と、雅の目を見て由美が言うと、 「彼氏なんて、居ないです!」 と、顔を赤くして雅が答えた。 けれど、すぐに真顔で 「それを言うなら、大地くんの恋人が嫌がると…」 と、雅が問いかけると、 「あ~、あの子、彼女作る気無いみたいなのよ。だから、あの子は気にしないで」 と、由美が答えた。 「彼女…、居ないんですか?」 思わず雅は、由美に聞いてしまった。 由美は、そんな雅の様子を見ながら、 「こっちに戻ってからは、居ないわねぇ」 と答え、 「二人に恋人がいないなら、今は、先の未来を気にするよりも、大事な事を考えましょう」 と、雅に伝えると、雅は頷いた。 「うちとしては、雅ちゃんが来てくれたら嬉しいのよ。 昨日も話したように、雅ちゃんパパとも約束したし。きっと逆の立場だったら、うちの茜を預けたりとかもあったはず」 そう、由美が話すと、雅は少し目を潤ませた。 「これから一週間、うちに住んでみて決めてくれていいから、考えてくれるかしら?」 「それでも悩むなら、ゆっくり答えを見つけてくれてもいいけど、1つだけ…」 そこまで話して、由美は雅と視線を合わせて、 「もう、無理はしないでね」 そう伝えると、雅の目から涙が溢れた。 涙を堪える雅を由美が抱き締めると、安心したように雅が声をあげて泣き出した。 『雅ちゃん、頑張ったね…』 声をかけたらもっと泣いてしまいそうで、由美は心の中で雅を褒めながら、しばらく抱き締めていた。
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