高校生活

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高校生活

私には、父親がいない。 大地への恋心を諦めた少し前、父親を病気で亡くした。 突然の別れだった。 長い闘病生活とかじゃなく、病気が発覚してすぐに亡くなってしまった。 呆気なくて、実感がなくて、しばらくは現実として受け止められなかった。 私は、父親が大好きだった。 私が高校に進学して、しばらくすると、寂しさを埋めるように、母に恋人が出来た。 母は、恋人を家に上げなかった。 それは、私と亡くなった父への配慮なのか分からないけれど、私は父とのこの思い出の空間をまだ壊されたくなかったから、ホッとしていた。 そして、少し寂しかったけれど、母の人生が幸せに過ごせるなら…と、何も言わず母の恋を見守っていた。 高校生の私は、バイトに忙しくしていた。 そんな私とは違い、大地は他県の進学校へ進んだと、隣の家に住む足立さんに教えてもらった。 『もう、遠い人なんだな…』 改めて実感をした。 高校では、人並みに恋もしたけれど、大地を想うあの頃の気持ちまで深く恋が出来ない私は、ことごとく失恋していた。 『恋って、どうするんだっけ?』 そんな言葉が頭の中を駆け巡る。 そして、考え疲れる度に、 『しばらく恋はしないでおこう…』 そう思う時期もあった。 それでも、また少し気になる人が出来ると、 『もしかしたら、この人なら…』 と、距離を近づけていた。 そんな恋を繰り返して、あっという間に私の高校生活は終わった。
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