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母の病院
母の入院が2年以上続いている。
それでも、入院前の目が虚ろな時が少なくなっていた。
入院直後は、牢獄のような個室で、見ている私の方が辛すぎて、なかなか会いに行けなかった。
一般的な個室になり、そして、今大部屋に替わった。
大部屋の人は、それぞれが少しづつ異なる病のようで、見ていて分かりやすい人もいれば、病人に見えない人もいた。
母が病棟の外へは出られないため、病棟内のカフェスペースのような所で会話をする。
幸いなのか、強制的に入院した事は、母は覚えていないようだ。
私にも普通に話をしてくれる。
…そんなときだった。
何気ない言葉のように、
「どうしてここにいるんだろうねぇ…」
母が呟く声が聞こえた。
私は答えられなかった。
『私が入院させたんだよ』
そう言えなかった。
私は、下を向いて黙ってしまった。
…胸が痛かった。
母は、そんな私を気に止めていないようだった。
看護婦さんに、
『もう少し様子を見て、転院も考えましょう』
と言われた。
また決断の日がやってくる…
私は、
『落ち込むな!しっかりしろ!』
そう心で自分を叱咤して、病院を後にした。
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