大地の不安

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大地の不安

『はぁ…』 大地は、溜め息をついていた。 バレンタインチョコを持ち帰ってきても、誕生日プレゼントを持ち帰ってきても、雅は何も反応してくれない。 『やっぱり、俺は、過去の相手なのかな…』 そんな思いが頭を過る。 雅から何か欲しい訳じゃない。 いや、欲しい。 欲しいけど、欲しいけど、違う…。 言葉にうまく出来ない気持ちが、溢れそうだ。 『雅に恋人が出来ても、祝福は出来ない』 それだけは確実だ。 だからと言って、雅とどうにか…とかは考えられない。 怖いのかもしれない。 この関係が壊れるのが。 俺とこじれて、この家から雅が居なくなってしまうのが…。 この前、茜に言われた、 『お兄ちゃんって、モテると思ったけど、周りの勘違いだね。 雅さんに対しての態度はホントあり得ない!』 が、頭の中を駆け巡る。 『雅にだけは、ダメなんだよな…』 溜め息しか出ない。 何も行動を起こせない自分自身に腹が立つ。 腹は立つけど、それでも、雅を失う怖さには勝てなかった。
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