突然のお見合い?

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突然のお見合い?

「柏木! 今日の夜空いてるか?」 川合課長からの突然のお誘いに、戸惑いながらも、 「はい。大丈夫です」 と、雅は答えた。 そして、由美に、 「今日は外で食べます」 と、連絡をする。 夜になり、パートさん達も一緒だと思ったのに、川合課長と2人だけ…。 『え?なんで?…不安なんだけど…』 頭の中は、不安な気持ちで一杯だった。 川合課長に連れられて、着いた先は、会社近くの和食屋さんで、そこの個室に通された。 不安な気持ちを抱えながら、個室に入ると、そこにはすでに、男性が1人先に座っていた。 少し癖のある茶色い髪の、体格の良い人だった。 そして、良く見ると… 「え? …啓太(ケイタ)?」 と、思わず懐かしい名前を声に出してしまった。 「おお! 覚えてたか! 偉いぞ!」 と、少しふざけた言い方で笑う彼は、高校のクラスメイトの川合啓太だった。 「あれ?川合って事は…、課長の??」 と、川合課長と啓太を交互に見ながら呟くと、 「俺の親父! ビックリしたぜ!お前の名前が出たからさ」 と、啓太が笑った。 啓太とは、ほんの1ヶ月ほど付き合った相手だ。 懐かしさと、少し居心地の悪さを感じながら、雅は啓太の前に座った。 「息子から、ちょっと付き合ってたから、久々に会いたいって言われてなぁ~」 と、微笑む川合課長に、雅はなんとも言えず、ぎこちなく笑うことしか出来なかった。 そして、 「まぁ、後は若い者同士で…」 と言って、川合課長は個室から出ていってしまった。 残された啓太と雅。 少しぎこちない雅とは違い、啓太は気楽そうにメニューを見ていた。 「…なんでそんなに緊張感無いの?」 と、見かねた雅が尋ねると、 「あ?緊張するわけ無いだろ」 と、メニューから視線を上げ、雅を見ながらそう答えると、 「だって、お前、今も王子様に惚れてるんだろ」 と、啓太は笑った。 言葉が出ない雅。 「なんで知ってるかって? お前の大好きな王子様の家に居候してるって知ったからだよ」 と言った後、メニューに視線を戻し、 「見合いの話が出るなら、まだ片想いか…。まぁ、がんばれ! さぁ、俺は食うぞ!」 と言って、メニューが決まった啓太は中居さんを呼んだ。 メニューなんて決まってない雅は、 『あっ、この自由さに着いていけなかったわ…』 と、昔を思い出していた。 それから、2人は、高校時代の話をしながらご飯を楽しんだ。 雅はふと、 「ねえ、なんで、私の居候先分かったの?」 と、気になったことを問いかけた。 すると、啓太はニヤッとして、 「そんなの、すぐ分かるさ!」 と言った後、 「バイト先の子の家で~、俺らと同じ年のイケメンの奴がいる近所の家って、そのまんまだろが!」 と、笑い、 「お前が高校に入っても忘れられなくてって言ってた男も、同じ年の近所の王子様みたいな男って言ってたろ。だからだよ」 と、続けて話した。 雅は思わず、 「良く覚えてたね…」 と、呟くと、 「お前が思う以上に、俺がお前を好きだったからだよ」 と啓太は優しく微笑んだ。 「今だって、その男じゃなければ、『俺のとこ嫁こい』って思ってたしな」 との啓太の言葉に、雅は真顔で啓太を見つめた。 「色々苦労したんだから、お前、幸せになれよ」 そう笑う、啓太を見つめながら、その啓太の想いに、雅は涙が溢れてしまった。 そんな雅を、 「お前の涙は、俺は拭いてあげられないから、泣き止め」 と言って啓太が微笑んだ。 雅は涙を拭きながら、 『私は、めちゃめちゃいい男と付き合ったんだな…』 と、啓太の人柄の良さを、改めて感じていた。
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