突然のお見合い?

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川崎家の夕飯時のダイニング。 「雅さん、今日お見合いだって!」 その茜の言葉に、大地は言葉を失った。 そんな茜を、由美は軽く睨みながら、 「黙って食べなさい」 と、少し強めに伝えると、 「このくらいしないと進展ないもん」 と、茜は少し頬を膨らませた。 「…ごちそうさま」 少しだけ口をつけたご飯をそのままに、大地は席を立ち部屋に向かってしまった。 由美は、 「雅ちゃんに対してだけは繊細なんだから…」 と、大地の後ろ姿を見てぼやくと、 「繊細じゃなくて、逃げてるだけ」 と茜は言って、ご飯を口に放り込む。 今までの、完璧なお兄ちゃん像が崩れていくのを、茜は少し嬉しくもあり、もどかしくもあった。 雅さんを見つめる兄は、ホントに普通の男の人で、今までの彼女さんといる時の王子様のような雰囲気とは全然違っていた。 茜にとっては、王子様のような兄は、少し鼻が高かった。 そんな兄は、もういない…。 でも、今の兄には心がある。 それは、嬉しい。 このスパイラルに、茜は複雑な思いに駈られていた。 「そっとしておいてあげなさい」 由美の声が聞こえた。 茜は、気になっていた事を聞いた。 「ねぇ、お母さん…、お母さんは雅さんがお嫁さんって、どうなの? 反対?」 由美は、少し考える素振りを見せた。 そして、 「ここであなたに答えてしまうと、今後の2人に影響しそうだから、やめとくわ」 そう言って、食べ終えたお皿を片付け始めた。 「ちぇっ…」 と、茜は呟くと、残ったご飯を食べ終え、食器を片付けて部屋へと戻っていった。 1人、大地は部屋のソファに座り、本を膝の上に置き、壁に掛けられてる時計の針を眺めていた。 『何時に約束したんだろう…』 『どこまで食べに行ったんだろう…』 『どんな男と…』 頭の中で繰り返される言葉が、大地を支配していた。 『俺みたいに、嫌な思いをさせない奴ならいいな…』 そう自分に言い聞かせていた。 時計の針が、なかなか進まない。 いつまで待てばいいのか、時計をぼーっと見つめていると、外で車の音がした。 窓から外を覗くと、家の前に赤いスポーツカーが停まっていた。 しばらく見ていると、雅が助手席から降りてきた。 思わず、目が離せなくなる。 じっと見ていると、運転席から男が出てきた。 スポーツマンのような、爽やかな男だった。 自然とその男を睨んでしまう。 その男が、俺に気が付いた。 そして、俺を見てニヤッと笑った後、雅のそばに行き、雅の頭を撫でていた。 見ていられなくなった俺は、窓から離れた。 雅に嫌われたくない…それが一番強い想いだったはずなのに、 『奪われたくない』 その想いが強く溢れた。 雅を想う愛しい気持ちが、胸の奥から溢れ出て止まらなかった。
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