変化

1/1
前へ
/55ページ
次へ

変化

啓太の事があってから、大地の態度が変わっていった。 例えば、雅が夕飯の準備をしていれば、大地はその手伝いをしたり、仕事の終わりを聞いて、迎えに行くこともあった。 茜が、 「だから~、雅さんは1人で帰る時間が好きなの!」 と大地に文句を言っても、 「週一ならいいだろ、な?」 と、にこやかに微笑んで、雅からも了承を得ていた。 最初は戸惑う雅だったが、大地の優しさや眼差しが、自分を想ってくれているからだと、素直に受け止め始めていた。 心から、嬉しかった。 見つめ合う時間が、日を追う毎に増えていく。 茜も由美も、そんな2人をあたたかい眼差しで見守っていた。 その様子を見て、久しぶりに帰る大輔は驚いていた。 毎年少ししか会わない間に、大地が王子様と言われる大人の雰囲気から、急に奥手の男に変わり、そして今、いつの間にか積極的な男に変貌を遂げている。 そんな大地を 『いい男になってきたな』 と、心の中で大輔は思っていた。 同じ頃、雅は母が気がかりだった。 雅が会いに行くと、嬉しそうにしてくれるけれど、時折ふと悲しそうな顔をする。 『病院に縛られてるのは辛いよね…』 自分が入院させた事で、母を悲しませてる現実に、雅は時々辛くなっていた。 病院からの帰り道、駅から歩いて帰る道中、家の近くで大地が私の帰りを待っていてくれた。 その姿を見つけて、安心感が雅の心を包む。 『大地が居てくれる』 雅は、その心強さが嬉しかった。 そして、大地がそばに来て、雅の手を握ると、 「大丈夫か?」 と、優しく問い掛けた。 雅は、握られた手に動揺しながらも、 「うん」 と伝えると、嫌がる素振りの無い雅を見て、大地は嬉しそうに、 「…帰ろっか」 と言って、そのまま手を繋いで2人は帰った。 雅は、母の様子が気になるけれど、今は大地のそばにいれる嬉しさが強く、繋がれた手に幸せを感じていた。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加