手紙

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週末の夜。 雅と由美がキッチンで片付けをしている頃、2階の1番奥にある、大地の部屋の前の廊下には、大輔と茜と大地の姿があった。 大輔は、大地と茜に、 「雅ちゃんに話がある。泣いてる姿を2人には見られたくないかもしれないから、雅ちゃんの泣き声が聞こえても、部屋にいてくれ」 そう伝えると、少し心配そうに頷く茜とは対照的に、大地は大輔を睨んだ。 「俺がそばにいる」 大地のその物言いに、大輔が睨み返す。 「お前に泣いている所を見られたくないかもしれないだろ!」 そう大輔が、1階の雅に聞こえないように、声を圧し殺しながらも強く言うと、 「俺がそばにいる」 と、大輔の目を見ながら、もう一度大地は繰り返した。 睨み合う2人。 そばにいた茜は、初めて見る二人の気迫に狼狽えていた。 しばらくして、大輔がため息をついた。 「…雅ちゃんが部屋に戻ってから声をかけてみろ。ドアを開けてもらえなかったら、そっとしておけよ」 そう言って、大輔は1階の由美と雅の居るリビングへと降りていった。 茜が不安そうに大地を見つめると、 「雅は大丈夫だ。 俺が守る」 そう答えて、大地は自分の部屋に入っていった。 茜は、大地の後ろ姿を見つめた後、大輔が降りた階段の方を見つめ、不安な気持ちを抱えたまま、自分の部屋へと入っていった。
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