大地の想い

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大地の想い

父親に言われて部屋に居た俺に、雅の泣き叫ぶ声が聞こえた。 慌てて部屋を出ると、同じように茜も飛び出していて、雅の泣く声で茜も泣いていた。 「おにいちゃん…、雅さん…」 そう言って、言葉にならない茜。 父親との約束を守り2階にとどまっていたが、雅が泣きながら部屋に戻る姿を黙って見送った後、リビングへと向かった。 リビングには、泣いている母親と母親を慰めている父親が居た。 俺は、父親が紙を手にしているのを見て、その紙を取り上げた。 すると、中に書かれていたのは、子供の様な字で 『みやびへ くびくるしめてごめんね ははおやしっかくだね おかあさんをわすれて 』 と、書かれていた。 『雅のおかあさん?…くびくるしめて…?』 少しずつ状況を理解してきた俺に、 「早苗さんに、雅ちゃんを頼まれたんだ…」 と、父親が言ってきた。 『だから、この前の言葉だったんだ…』 数日前、父親が雅への思いを確認してきた時、俺への挑戦的な言い方をした理由がこれだとわかった。 手紙を何度も見返して、今俺が1番強く思う事は、 『雅のそばにいるのは、俺だ』 その想いだけは、迷いが無かった。 父親に、 「わかった」 と、声をかけ2階に上がると、泣きながら心配そうな茜の姿があった。 「雅は、大丈夫だ。 俺がいる」 自信の溢れる俺の言い方に、茜は少し安心した様子で部屋に入っていった。 雅の部屋の前に立つと、雅に声をかけた。 「雅…、ドアの前に居るから、顔を見せれるようになったらドアを開けて」 雅からの返事は無かったが、ドアの横の壁に寄りかかるように座り込んだ。
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