雅と大地

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翌朝。 雅が目覚めると、眠りについた時と同じ体制で大地がベッドに寄りかかりながら眠っていた。 『こんな体制でそばに居てくれたんだ…』 大地の体調が気になりつつも、そばにずっと居てくれた事が、嬉しかった。 泣きすぎて腫れぼったい目を手で押さえる。 また、涙が溢れた。 辛いのか、嬉しいのか、不安なのか、幸せなのか…、自分でも分からない涙が溢れた。 大地が起きる前に泣き止まないと… 両手で顔を覆いながら、雅が涙を堪えようとしていると、大地に優しく抱き締められた。 驚いた雅が、涙を溢しながら顔を上げると、優しく微笑む大地の顔が目に映った。 大地が優しく雅の頭を撫でる。 「ちゃんと、寝れたか?」 そう大地が声をかけると、雅は静かに頷いた。 「母さん達と顔を会わせづらければ、朝ごはん、ここに持ってこようか?」 そんな大地の優しさに、胸が擽られる。 でも…、 「おじさんやおばさんに心配かけちゃったから、下に行く」 そう雅が大地に伝えると、大地は頷いた。 雅の涙が落ち着いてから、2人でリビングに行くと、心配そうな茜と大輔と、雅の顔を見て、今にも泣き出しそうな由美がいた。 雅は、思わず由美に抱きついた。 「…心配かけて、ごめんなさい。 私、大丈夫だから」 雅がそう伝えると、由美は抱き締め返しながら、 「なにもしてあげられなくて、ごめんね…」 と、堪えきれない涙を流しながら言葉を返した。 雅は、 「そんなことない! 支えてくれてもらってる。私、ここの家に来て幸せです」 と、今まで伝えられなかった感謝を言葉にした。 「ここに置いてもらえて、1人じゃないって思えて、ホントに感謝してるんです」 そう由美の顔を見つめ、雅は微笑んだ。 そんな由美と雅のやり取りを黙って聞いていた茜は、雅と由美を包むように抱き締めた。 そして、 「私も居るんだから! 私も入れて!」 と、少し拗ねたような声色で言うと、雅が由美から手を離し茜を抱き締めて、 「茜ちゃんもありがとね」 と、微笑んだ。 茜と雅が抱き締め合う姿を、由美が嬉しそうに見つめて、 「さあ、朝ごはんにしましょう」 と声をかけた後、由美と雅と茜は、おしゃべりをしながら、キッチンへと向かった。 3人の後ろ姿を、大地は安心した顔で見つめていた。
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