啓太と大地

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啓太と大地

雅が前に待ち合わせた和食屋さんに向かうと、玄関前に啓太が先に来ていた。 「よっ! とりあえず中入るか」 そう言って、中へと先に入ってしまう。 呆れながらも、雅は啓太の後を追った。 お店の中に入り注文をした後、 「で、王子様と喧嘩でもしたか?」 と、啓太がニヤつきながら聞いていた。 雅は、ちょっと言うのが嫌そうな顔をしながら、 「そうじゃないんだけど…」 そう答えて黙り込んだ。 「言えよ」 そうせかされ、仕方なくといった感じで、 「大地の会社の所で、大地の元カノさんを見ちゃって…、綺麗な人でね、お医者さんの娘さんで…」 少し話すつもりが、愚痴のように次から次へと口から言葉が溢れた。 啓太は少し呆れたように、 「なんだ、逃げたのか」 と言うと、雅は、 「だって、大地の幸せ邪魔してる気がするんだもん。 なんか、帰りづらくて、ホテルにでも泊まろうかと…」 と、少し膨れた顔で啓太に言い返した。 啓太は、 「まぁ、飯食ってから、後の事は考えるんだな」 と答えた。 食事を終え、時計を見ると9時を過ぎていた。 雅は、由美達が心配しているかもと不安になり、 「友達の所に泊まるかも。心配しないでね」 と、由美へ電話をかけた。 由美からは、 「大丈夫ならいいのよ。気分転換してね」 と、返事があってホッとした雅は、携帯電話を机に置き、お手洗いに向かった。 1人残った啓太は、雅の携帯電話を眺めていた。 雅の携帯電話に、誰かから電話がかかってきたようだ。 画面を見ると、 『大地』 の文字。 啓太は、電話に出た。 「もしも~し」 と、軽い口調で電話に出ると、 「誰?」 と、不機嫌そうな男の声が聞こえた。 「俺、雅の元彼で~す! 今日は雅、帰らないかも~」 と答えると、 「…そこどこ?」 と、さらに不機嫌が増した声がした。 啓太は、 「雅の会社の近くの和食屋で~す!お店の名前は…ひ、み、つ♪」 と言って、電話を切った。 啓太は、携帯電話を見ながら、 『このくらいはバチ当たらないよな』 とニヤッとしながら思っていた。 この近くで9時過ぎても営業している和食のお店はここしかない。 奴は来る。 どんな男だろうな~ 啓太は、相手の不機嫌さは気になったが、それでも好奇心には勝てなかった。 雅がお手洗いから戻ってきた。 啓太は、 「今からデザート頼もうぜ!」 と言って、またメニューを広げた。 そんなマイペースな啓太を呆れた顔で見る雅。 『いい人なのか…勝手な人なのか…分からないわ』 心の中で呟いていた。
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