母の変化

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母の変化

大地との再会から時は流れ、いつも通りの平和な日々の中、違和感が生まれ始めていた。 『なんか、おかしい…?』 母の様子を見ていると、ちょっと違和感があった。 母は少しおとぼけさんで、ちょっと変わり者な所もあるから、気のせいかもしれない。 でも…、 『あんなに独り言多かったっけ?』 それが私の初めての違和感だった。 その違和感から半年後、 『ピンポ~ン』 と、家のチャイムがなり、玄関に向かうと、お隣の足立さんが困ったような顔をして立っていた。 「どうしました?」 と、私が訪ねると、足立さんは言いづらそうに、 「あのね、怒らないで欲しいんだけど、お母さん…、少し様子変じゃない?」 と、問いかけてきた。 その言葉に戸惑った私が、返事を返せず黙っていると、 「この前ね、家の前で1人で見えない誰かと話してるような感じで、それでいて目も虚ろでちょっと心配になってね…。 他のご近所さんも言っていて、私が代表で話をしに来たんだけど…」 そこまで一気に話した足立さんは、一呼吸して、 「…お母さん、病院で見てもらった方がいいと思うよ…」 そう言われた私は、頭を殴られた様な感覚に陥った。 認めたくなかった。 信じたくなかった。 まだ40代の母が、精神的に病んでいると言われるなんて…。 そして、そんな母を恥じた自分にも気付いてしまった。 私が逃げていた出来事だったのに、他人から現実を突きつけられた私は、落ち込んでいた…。 私には、母しかいない。 母方の親戚は、飛行機で行かないと会えないくらい離れているせいか、祖父母が亡くなってから、いつの間にか交流が無くなった。 父親の親戚は、父親が亡くなった時から、疎遠になってしまった。 だから、今さら頼れない。 かといって、母に彼氏は居ても、私とはほとんど一緒にいない。 それに、少し前に、私が母の違和感を伝えた時、母の状態を『変わっていない』と断言していた人だ。 病院へ母を連れていきたいと言っても、あの人は渋るだろうし、何よりも 母が行きたがらないだろう。 …どうしたらいいんだろう。 ほんの1週間前、22歳を過ぎたばかりの私にとっては重すぎる課題に、心と頭は悲鳴を上げていた。
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