初めから、ずっと

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初めから、ずっと

すると、突然悟が笑い出した。 そして、 「ダイ!お前初恋実らせたのか? やったな!」 と、嬉しそうに大地に声をかけた。 その様子を皆がキョトンとしていると、 「お前、ホントに覚えてないのかよ? ルウにいちゃんって、呼んでくれてたくせにさ!」 そう悟が答えると、大地は記憶の中に、大好きだったルウにいちゃんを思い出した。 でも…、 「ルウにいちゃんは、クールで本ばかり読んでいて大人びた感じで…」 そう大地が呟くと、足立さんが、 「あら!覚えてたのね! そうよ~、この子、昔は知的なイケメンって言われてて物静かでね~、なのに、海外ボランティア行ったら、こんな風になって帰ってきたのよ~!」 と笑った。 その様子を見て、雅も、 「ルウにいちゃんは、覚えてるかも…」 そう呟くと、悟が、 「そうだろ! 雅なんて、俺にくっついて『王子様みたい!ミヤビと結婚して』って騒いだんだぞ!」 と、雅の方を笑いながら見て、 「だからダイが傷付いて『ルウにいちゃんより王子様になって、ミヤビチャンをお嫁さんにするんだ!』って泣いてな~」 と、今度は大地を笑いながら見て、 「しまいには、『ルウにいちゃん大嫌い』って言って、外に出なくなっちゃったんだよな」 と、続けた。 大地と雅の昔話を、初耳だった大輔と由美は驚いていた。 「あっ、雅の父ちゃんがよく一緒にいてさ、『あんなに大地に愛されて、雅は幸せ者だな』って、笑ってたのを思い出したよ」 そう言って、悟は雅に微笑んだ。 突然の父の話に、雅は涙が溢れた。 そして、 大地に想われていた事がすごく嬉しかった。 大地は、今の自分がなぜこうなのか、やっと納得できていた。 『王子様キャラを作り上げてたんだ…。 本当の俺は、今の俺だ』 王子様のようになりたいという気持ちが強すぎて、元々そうだと自分でも勘違いをしていたのかもしれない…。 しかも、雅に振られたから記憶から消していたのかも…。 大地は、そう思った。 悟は、考え込む大地をチラッと見た後、 「雅にお礼を言いたかった」 雅にそう伝えた。 不思議そうな顔をした雅に、 「雅がな、絵本で勇敢な王子様の物語を見た後に、『ルウにいちゃんだって、皆を救える王子様になる!』そう言ってくれたんだ」 と、続けた。 雅が悟を見つめる。 悟と雅が見つめ合う。 「雅がそう言ってくれたから、海外ボランティアに行きたいと思う自分の心と向き合えたんだ。 だから、ありがとな」 そう笑う悟に、雅も嬉しくて微笑んだ。 悟は大地に視線を向け、 「ダイ! 雅を幸せにしないと、俺と雅の父ちゃんが恐いからな!」 そう伝えると、大地は真面目な顔で、 「俺は、雅と結婚するために、今ここに居る。だから、雅が俺と結婚したいと思ってくれるまでずっと待つよ」 そう答えた。 雅は、その大地の言葉が嬉しくて、涙が溢れた。 『大地と結婚したい』 迷いの無い言葉が、雅の頭の中に浮かんだ。 雅が突然席を立ち、大地の目の前まで歩いていく。 それを、皆が見つめていた。 大地もまっすぐに歩いてくる雅を見つめた。 雅が泣きながら、 「川崎大地さん、私をお嫁さんにしてください」 そう言って頭を下げると、大地は思い切り雅を抱き締めた。 皆の嬉しそうな声が響く。 幸せな空気に包まれていた。 大地は、雅を抱き締めながら心の中で思った。 『初めから、ずっと…、君に恋していたんだ…』 …と。
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