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眺めのいい部屋
人に優しく、自分に厳しく。
正直に、でも言葉選びは慎重に。
困ったり悩んだりしている人には躊躇わず手を差し伸べて、親や友人に話せないような常識から逸脱した真似はしない。
そんなふうに真っ当に生きていても、人生は思うようにいかないものだ。
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八月も終わりに近付いたが、夜になってもまだ外は蒸し暑い。
風のない夏の夜、一人で住む部屋のバルコニーで、武井はしばらく前から止めていた煙草を吸っていた。
それなりに有能でそれなりに人付き合いが得意な武井の日々に、大きな波風はない。
とは言え生きていれば、うまくいかないな、と感じる事が重なる時もある。
そんな時に頼るのが、いくらかの煙草といくらかのアルコールである事が、また彼の慎ましやかなところだった。
仕事でミスをして叱責を受けるのは仕方がない。
だが、今日のミスは武井自身が招いたものではなかった。直属の上司の指示が間違っていたのだ。
武井がマネージャーから叱責を受けている間、上司は素知らぬ顔で自分の仕事をしていた。
言い訳を善しとしない武井の性格は、こういう時は災いとなる。
検討外れの叱責とミスの後始末に時間を取られ、ようやく仕事を片付けて家に着いた頃には、十一時を過ぎていた。
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