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プロローグ
冬が終わりを告げ、春の気配が一気に訪れる三月末――新生活へ向けて多くの人間が希望に胸を膨らませ活動を開始する。
同じく地方に住む山都心夢美もそのひとりだ。
進学に伴い実家を出てアパートでひとり暮らしをしていたが、就職ですることになった為、県内ではあるが別の市へと引っ越すことになった。
既に新しく住むアパートは契約しており、今日の午後いよいよ完全に引っ越しをする。
少しでも経費節約したくて家具や家電は父親が軽トラックを借りて前以て運んでくれており、残りの小物等を自分で運ぶ事にしていた。
「最終準備完了」
部屋の小物類をダンボールに詰め込み終える。
ダンボール以外物が無いガランとした部屋を見ると、寂しさが込み上げてくる。
けれど、いつまでも座り込んではいられない。
「さてと、運ぶとするか」
再びヤル気スイッチを押した心夢美は、休む間もなく荷物を車に運び込む事にした。
よいしょ、と気合いを入れて服やら何やら入った箱を持って部屋を出て、外階段を降りて車へ。
数としては五つ程度なので楽といえば楽だが、なにせ服の箱は重たいので足腰にくる。
そうして苦労した箱運びも最後のひとつになった。
上と横には『台所』とペンで分かりやすく書いてある。
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