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異世界の迷い子
頬に何か優しい温もりを感じて意識を浮上させた心夢美は、ゆっくりと目蓋を押し上げた。
視界に映るのは青い空―を遮るモフモフ。
「え…何?」
「ニャーン」
「わぁーっ!!」
慌てて起き上がった心夢美は思わず頬を手で擦って感触を取り除こうとしながら、ぼんやりだが理解した。
ネコタのかぎしっぽが顔に乗せられていたことに。
「もうっ、驚かせないでよ―って…え?」
跳ね除けられた不満そうな顔のネコタの向こうには、見たことのない景色が広がっていた。
こ、ここどこ?! !
驚きに声が出せないまま数秒固まった後キョロキョロと周囲を見回すが、森と畑、それから道が伸びているだけ。
アパートのアの字も見当たらない長閑な景色に衝撃で脳が正常に働かない。
確かに家に居たはずで、アパートから引っ越し荷物を運び出していた。
そして、階段の所で…ネコタと一緒に落ちた記憶がある。
「でも、どこも痛くないし怪我も無いんだけど。落ちたのは気のせい?」
夢にしては感触がリアル過ぎる。
目の前のネコタはお尻を向けて短いかぎ尻尾をピョコピョコ動かし周囲の匂いを嗅いでいる。
猫嫌いとはいえ、心配は心配なので「ネコタ怪我は無い?」と訊いてみれば、呼ばれたと思った様で近寄って来た。
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