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ザク、ザク、ザク、ザク……。
「……悪く思わないでよ。あなたがいけないんだから…」
土を掘り続けるなんて作業をずっとしていると、腕が疲れ痺れてきた。全身の疲労も濃い。だが……。
「もう、すべておしまい……将来なんて……ない」
今にも泣きそうな声で、独り言が闇に響く。もう聞こえないかもしれないけれど、私は後悔とも謝罪ともつかない言葉を呟いた。
彼女とは20年近く一緒に暮らしてきた。まだ十代という若いころ、周りから二人の仲を猛反対され、駆け落ち同然でこの山深い村へとやって来た。
閉鎖的な村人から奇特な目で見られ、村八分に近い扱いを受けた。それも仕方ないと思いながらも、最初の数年間私たちは上手くいっていた。
子どもは出来るはずもなかったけれど、ごく普通にしあわせな家族として暮らした……はずだった。
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