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だが、彼女は年を経るごとに次第に増長し束縛が酷くなっていった。私からの愛情を当たり前とその座にふんぞり返り、何もしない癖に自分の要求ばかり突き付けてくる。
働くのは私だけなのに彼女は手伝うことも、家のことを何一つするでなく不平不満ばかり。それでも愛してたから、放り出せずに重い気分で毎日働いていた私に――思いがけない出会いが待っていた。
彼女と違い無欲な女は、ただひたすら健気に私に尽くしてくれるし、ことあるごとに私を優先する……私が女を愛するのは自然なことだった。
けれど先日遂に女の存在が発覚し、彼女は気が違ったかのように私を責め罵った。刃物を持った彼女と私は揉み合いになり――そして。
「あれは事故だ……あなたが勝手に事故死しただけ。
私が刺した訳じゃない。たまたま壁にぶつかり、その反動で刺さった場所が悪かっただけ。 こうして土に還すだけでも有り難いと思って欲しい……」
ぶつぶつ呟きながらも、なおも増してゆく圧迫感。私が苦労をしながら手を伸ばし、再び土を動かそうとした刹那――なにか声が聞こえた。
夜闇の中にいるだろう彼女から意外な言葉が発され、思わず手を止める。そのまま息苦しさを感じた私は、急激に意識が遠のくのを感じた――。
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