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愛を込めて
「こんなまずいものしか作れないのか」
歩み寄りは踏み躙られ、作った料理は全てゴミ箱に捨てられた。
…
マリリンはまた捨てられるのではないか、そんなことを考えながらエルヴィスにお菓子を渡した。
今日は愛の感謝祭、女性から男性にお菓子を、男性から女性に花を渡す日だ。
「あのね、おじさま受け取ってくれる?」
「先越されたか、はいおじさんからもお花の贈り物」
エルヴィスはきちんとお菓子を受け取ってくれた、それに王子からは貰ったことのない花束を貰った。
赤と白のアネモネの花束、マリリンはとても嬉しかった。
「うん、美味いな。マリリンは本当に料理が上手いな」
カカオニブ入りのチョコレートクッキーはエルヴィスの口にあったようだ、よかった。
「殿下から花なんか貰ったことなかったから嬉しい、ありがとうおじさま。」
「あのクソ王子が」
「おじさま?」
「なんでもない、」
もう、自分勝手な婚約者はいない。
理不尽な両親はいない。
怖い目を向けてくる王子達はいない。
おじさまの優しい愛に包まれてマリリンは溺れていく。
「まだ、王子の事を思い出すなんてイケナイ子だ、おじさんのことだけしか見れないようにしてあげようか?」
エルヴィスに腰を抱かれ、顔を近付けられる。
「お、おじさま。そ、外です、」
「見せつけるには丁度いいね、」
「良くないですぅ」
エルヴィスの瞳には既に剣呑な光が宿っている、しまったと思った時にはもう遅かった。
「ご、ごめんなさい。おじさま、せめてお家の中でお願いしますぅ」
マリリンの悲鳴が田舎町の青空に吸い込まれていった。
…
アルフォンスは所用でとある田舎町に来ていた、そこでふと思い出す。ここはマリリンが惨めに暮らしている街だったことを、きっと毎日泣き喚きながら暮らしているに決まっている。
そんな愚かな考えを巡らせながら。
アルフォンスは女の声が聞こえた方に歩いていった、もし美しい女だったら愛妾にしてやろうそんな事を考えながら。
そして、茂みの中からその姿を覗く。
そこにはマリリンの姿があった、ただアルフォンスが想像していたのとは違い幸せそうな顔をしていた。
蕩けそうなフレンチローズの瞳を中年の男に向けている、そんな顔を自分といたときには見せなかったくせに。
そのまま、吸い込まれるように口付けを交わし幸せそうな顔をするマリリンにアルフォンスは欲情した。
マリリンが欲しいと、あんな可愛い顔をするならば自分の手の中に置いて支配したい。
この馬鹿王子はそれが不可能なことにまだ気付いていない。
そしてこの欲がとある高貴なお方を怒らせることにまだ気付いていなかった。
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