ダチュラは毒花

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ダチュラは毒花

ミカリは顔が良く王族の男の婚約者になれたことに歓喜した、あとは邪魔者の始末をしようと思った。 それは、マリリンというブサイク。 あの王子がマリリンを欲しがっている、それはダメ。 邪魔な女を消すために、ミカリは破落戸に金を渡しマリリンを襲わせることにした、そうすれば自殺でもするだろう。 そう思っていたのに、ミカリは目の前に突きつけられた書状に目を通し絶望した。 「な、なんですかっ、これは。ミカリが、」 「お黙りなさい、アルフォンス。お前に発言する事を許した覚えはありません」 品の良いドレスを着込んだ衰えぬ美貌の老婆は凛とした雰囲気を崩す事なく、孫を叱りつける。 「お前の愚かさは父譲りですね、マリリンを国外追放しそんな下賎な娘を婚約者にするなど。それに、お前は資格もないにも関わらず他者を断罪した罪により廃嫡とします。」 老婆、王太后ステリアンはアルフォンスを睨みつける。 「しかし、あいつが」 「黙れと言ったのが聞こえませんか、」 「ひっ」 ミカリのしたことは全て筒抜けだった、そのことが罪状として書かれている。 「まあよくもやってくれたよな、覚悟はできてんだろう?」 黒を基調とした礼服を着込んだ男が近付いてくる、アルフォンスは見覚えがあった。 そいつはマリリンと一緒にいた男だ。 「お、お前が嵌めたのかっ、この卑怯者」 「ハハッ、そりゃどうも。おじさんからしたら褒め言葉だ。お察しの通りお前らのしたことを噂にして流したのはおじさんだ、王太后殿まで出てくるとはな」 「貴方に引っ搔き回されては敵いませんので、生憎と優秀な王女がいますので、次期国王は彼女にします。」 ステリアンは呆れながら言った。 聖王国には噂が流れていた、マリリン公爵令嬢が国外追放されたのは王子の我儘だ、新しい婚約者は毎晩違う男どもに股を開く卑しい女だ、マリリン嬢は毎日両親から虐待されている、王子達は夜な夜なよからぬ遊びをしている、噂は国民達の怒りを増長させた。 それを鎮めるためにステリアンが呼び出されたわけである、そして調査団を結成し調べさせた。 そして、今回の件が明るみにでた。 マリリンに冤罪を着せ国外追放、実家での虐待、王子達に強姦されそうになった、そしてミカリが国の金を持ち出し破落戸に渡しマリリンを襲わせようとした事実。 「第一王子アルフォンスを廃嫡、第二王子から第四王子の三人は北の塔へ幽閉。ミカリ、貴方は三日後処刑します。」 「お、お待ちください、なぜミカリだけ処刑なのですか、おかしいでしょう。」 「いいでしょう、アルフォンス。お前も死刑とします、仲良く死んでいきなさい。あの優しい令嬢を傷つけてまで手に入れた相手なんですから。」 それから二人は迫り来る死に怯え、お互いに罪のなすり付け合いをし罵倒しあっていた。 「いやぁ、今回も面白かったなぁ。あの鋼鉄の淑女が出るとは」 エルヴィスはニヤニヤと笑っている、予想外のことが起きるのはいつだって面白い。 「おじさま、どうしたの?」 「なんでもない、さぁ寝ような。」 カーネションの髪を撫でながら、エルヴィスは愛しい女の寝顔を見つめた。 どんな毒で殺してやろうか、とあの醜い二人の死刑方法に思いを馳せていた。
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