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「どうやら倒したみたいね。これで私も成仏できるのかな。でもそれって寂しい……」
「僕も帰るのか。この世界に居場所はないけど、寂しいな」
僕たちは神社に向かった。月読命に報告しに行くためだ。
「ご苦労であった。汝らは、よくぞここまでのことを為してくれた。これで暴虐をしいるものもこの街にはいなくなるだろう。死んだものは浄土に行き、生けるものは現世に帰ると良い」
「私、ここで働かせてもらえませんか?」
「汝は死んでおるのか。ならばよかろう」
「月読命が認めてくれるってすごいなぁ。でも、谷川さん成仏したいって言ってたけど、いいの?」
「会いたい人がいる。いや、あなたに会いたいの。この神社で働くから、たまには来てね」
「ならば、生者は帰るとよい。あまりいても、よろしくないのでな」
「ありがとう。谷川さん。さようなら」
「お礼を言うのは私の方よ。ありがとう。清水くん」
谷川さんが、僕の手を握ろうとすると、月読命は首を振った。
「死者と生者が交わるのは本来よくないこと。死んだら来ればよい。それまで待て」
谷川さんが寂しそうな顔をして手を振った。
「さようなら」
最後にそんな声を聞いた気がする。気がつくと神社で横になっていた。左腰につけていた刀がない。
駅の方に歩くと、みんなの体が透けていない。どうやら元の世界に戻ったらしい。元の世界?なんだか、何をしていたか覚えていない。散歩を始めてから、2時間くらい経っていた。帰ろうと思ったが、夜中に神社に行こうと思った。月夜見宮神社へいこう。
夜中の月夜見宮神社は大きな満月に照らされて綺麗だった。境内の神木の側には白と真紅の装束を着た巫女が、月の光に透き通り、照らされていた。
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