巫女と迷子と夏月夜

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 エレベーターで最上階に着いた。虚栄と思える無駄に豪華な装飾の部屋だった。前は、社長室として使われていたようで、立派な椅子が一つ置いてあった。そこに1人の化け物と化した男が、苛立ちつつ宝石を食べながら座っていた。目が汚く輝く石になり、高価で偉そうなスーツを着た醜く太った化け物がいた。体中が汚れた宝石になっていて固そうだった。  「何が欲しいんだね?君たちは」 化け物は、話しかけてきた。 「何もいらないわ。強いていうなら死後の安寧。こんな世界はもう終わりにしましょう」 「終わらせないよ。私は、仕事をして素晴らしい世界を創ってきたんだ」 「お前のやってることは間違っている。僕がお前の不正を正す」 「そうか。私に反抗するか。ならば殺してやろう」 宝石の化け物は指を鳴らすと、鋼鉄でできた巨大なゴーレムを呼び出した。  僕は、刀を抜いた。しかし、切れそうにない。ゴーレムはゆっくりと近づいてきて、拳を振り上げ、僕を殴りかかってきた。僕は走って避けた。谷川さんは鏡を構えて呪文を唱えている。今回は少し時間がかかるようだ。僕は、ゴーレムを引きつけることにした。念のために宝石の化け物にも気を配りながら、ゴーレムに追いかけさせた。谷川さんが呪文を何度か唱えると金色の光が放たれた。ゴーレムもやはり崩れ落ちて消えていった。谷川さんは、宝石の化け物にも光を当てた。しかし、宝石の化け物は眩しそうにするが、なんともなっていない。 「その光は私に効かない。霊力のある宝石を食べているんでね。そんなくだらない呪物など聞かないのさ」 「なら、僕が切る!」 僕は刀を構え、切り掛かった。すると、宝石の化け物は、ショットガンを構えた。一度に、広範囲に多数の弾が出る銃を何発か撃ってきたが、どれも当たらなかった。谷川さんが鏡を向けたら、鏡に映った銃弾が全て反射したのである。 「銃は効かないのかね」 そう化け物が言うと、金でできた大きなハンマーを持って振り回してきた。それを振りわますたびに中から、金、銀、白金と貴金属でできた槍やら剣やらが飛び出してきて、僕たちに襲いかかった。谷川さんはそれを鏡で跳ね返しつつ、僕にアイコンタクトでタイミングを教える。少しづつ宝石の化け物に近づける。僕は、貴金属の雨を駆け抜けて、化け物の首を切り落とそうとしたが、硬くてなかなか切れない。谷川さんがそこに鏡から光を放った。すると、首の傷跡が焦げてきたので、僕は、改めて刀で首を切り落とした。今度はしっかりと首が切れ、化け物を倒せた。生首になった化け物は、欲望まみれの表情をしたまま腐って消えていった。
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