高級フレンチレストラン

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『夜7時に駅ビルのスタバ待ち合わせで』  そう弟から連絡を受け、私は仕事終わりに駅ビルへ向かっていた。  3月に入ったというのに春の兆しはまだ来ない。朝も夜もめっぽう冷えるのでコートにマフラー、手袋も必須アイテムだ。  たまに手を繋いで歩く男女とすれ違う。別に羨ましいとは思わない。コートのポケットに手を突っ込めば手袋越しにカイロが私の手を温めてくれるから、寒くない。  冷えた身体を暖房の効いたビル内に潜り込ませる。急な温度変化で鼻水が出てきた。ジュルジュルっと啜って待ち合わせ場所へ急ぐ。  私はどうして呼び出されたのか分からなかった。家に帰れば会えるのに、弟の(しゅう)はなぜか私を外に呼び出した。スタバで待ち合わせということは、もしかして紹介したい彼女がいるとか? 今までそんな素振り見せてきたことないけど、もしそうなら目いっぱい冷やかしてやろう。  指定されたコーヒーチェーン店に着いて、店内を見回す。平日の夜7時とあって、利用客は少ない。見たところまだ来てないようだ。呼び出しといて遅刻とはいい度胸してんな。 『先に座って待ってるよ』  キャラメルマキアートを注文して席で柊にメッセージを送ると、すぐ返事が来た。 『俺、30分前から待ってるんだけど』  え。思わず中腰になって店内を見渡す。しかし、いくら探しても弟の姿は見つからない。 「もしかして」  ふと思い当たることがあったのでメッセージを送る。 『別館の方にいる?』 『そうだけど』 『やっぱり。このカフェ、本館もあるんだよ。私本館の方にいるから、そっち行くよ』  別館までそう遠くない。私は荷物を持って移動した。
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