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機械に弾かれる世界最強のパスポート
何年か前まで、ロンドンのヒースローは、世界一入国が難しい空港と言われていました。
しかし今回は違いました。搭乗クラスに関係なく、顔認証です。
スムーズに入国できるはずなのです。
パスポートを機械に弾かれさえしなければ。
ということは、弾かれたんだな?
弾かれました。
噂には聞いていました。
日本のパスポートが精巧にできすぎているので、こういうことが起こるらしいのです。
15時間かかって、ここまで来たんだよぉ、入れてくれよぉ、と、写真を強くガラス面に押し当てても、機械はウンともスンとも言いません。当然、ゲートも開きません。
1メートル先はイギリスなのに、入れないのです。
格闘していたら、背後から、マダ~ム、という声が。
振り向くと、マーナの三倍くらい体重がありそうなおばちゃんが立っていました。
「ブルーゲートに行ってください」
トホホ……。結局、マーナは有人ゲートへ。
綺麗なお姉さんは、マーナの顔を見、マーナのパスポートを見て訊きました。
「何日間の滞在ですか」
「8日間です」
「8日間、オッケー」
そして、あっけなく入国。バンザーイ!!!
前回までは、こうはいかなかったのです。
自分の記録にもなるので、恥を忍んで書いておきます。
ファーストとビジネスはファストトラックを利用するので、待ち時間はほぼなしです。列に並んだこともありません(エコノミーは二時間以上かかっていたらしい)。
だからなのか、マーナが怪しそうなのかわかりませんが、いろいろと質問されるのです。
「なぜイギリスに来たのですか」
「観光です」
「どうして、あなたはひとりなのですか」
「ひとり旅が好きだからです」
「こちらに友達はいますか」
「いません」
「ビッグベンには行きますか」
「できれば見たいと思っています」
「ビッグベンは、今、修理中ですよ」
「知っています。横を通るだけです」
「ところで、どうして、あなたはひとりで旅をするのですか」
「エーッ! あの……」
この辺りから、雲行きがあやしくなっていくのです。
マーナたん、観光にしては、短期間に出入国を繰り返しています。
これ、一番怪しいのです。
白髪のばあさんといえど、もしかしたら、こちらに居座るつもりかも、または仕事をするのではないか、と思われるようなのです。
そんなこんなで、冷や汗をかきながら入国していました。
今思えば懐かしい……。
でも、どうしてひとり旅が好きなのかと訊かれても……。
日本語でも、上手く答えられません。
逆に訊きたいわっ。
なぜ、そんなに群れるんだっ!!!
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