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虹の向こうで会いましょう。
何度目の欠伸か、なんてものはもう数えていない。駅前を通り過ぎる人々をただただぼんやりと眺めるのはもう習慣になってしまった。
今日は土曜日。天気が良いこともあって、午前中から人通りは多かった。寂れたスーパーの前、僕はよいしょ、と座り直す。
「あれ!?今日じゃなかったっけ!?」
すぐ近くで若い男性の声がした。僕がびっくりして振り向くと、男性二人組がスマホを片手に喋っている。大学生くらいだろうか。僕が待っている人達ではなかった。二人組は、何かスポーツでもやっているのか体ががっしりしている。
「この場所でフィーバー起きるって聞いたのに……ブチモンばっかり出てくるんだけど」
「……ごめん。マジでごめん。今スケジュール確認したらそれ来週だった。一週間勘違いしてた」
「一週間!ばかじゃね!?」
「いやほんとごめんってー」
「相変わらず抜けてんなあ。……あ、でもあっちの方でサクレンバード湧いてるって情報は来てる。そっち行ってみる?」
「行く行く。捕獲は頼んだ!」
「自分で頑張れっつーの!!」
どうやら彼等はスマホゲーをやっていたらしい。何か勘違いがあって、このスーパーの傍まで来たということのようだった。喋りながら遠ざかっていくその背を、僕はため息と共に見送った。
久しぶりに若い人が来たと思ったのに、スーパーに用事がある人でもなかったなんて。なんだかさみしい気持ちになってくる。
――まあ、仕方ないか。
あまり期待しないでおこう、と決める。どうせ、待つのには慣れている。
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