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「あ、あの?」 「花付けてあげる」 「あ、ありがとうございます」 那南は真顔でそうお礼を告げると、フッと奇麗な顔で微笑む彼。 「はい、完了」 「あ、あの? 先輩ですよね」 「あ、自己紹介してなかったね? 僕は佐神 凛月」 「私は黒河那南です」 「ナナちゃんか… 俺もリツでいいよ」 「…佐神先輩」 「フッ 呼ばない辺りがいいね? 那南って呼んでいい?」 「…嫌です」 「へ?」 「ふふっ 冗談です」 那南が可愛い笑顔で笑うと、凛月は拍子抜けした顔になる。 「可愛いじゃん」 「はい?」 「笑ったら凄くいい」 「えっと…」 「那南ちゃん、俺と付き合わない?」 「は? 意味わかりません」 那南は真顔に戻ると、キッと睨んで警戒していたが凛月は微笑むだけだ。 「な、何か近付いてませんか?」 「ふふっ 那南ちゃん、気に入った」 「困ります! 教室に行きたいので退いて下さい」 那南が困った顔でそう告げると、凛月は益々愉しそうに笑っている。 「凛月、何してんだ? 入学式の準備しないとだぞ」 「あ、ごめん! 可愛い子が居たから、つい」 凛月はそう告げると、那南はやっと解放されて話しかけて来た相手を見ると目をパチクリしていた。 「遥河先輩?」 「あっ… 黒河か」 「はい! 遥河先輩もこちらでしたっけね?」 「うん、そうだよ」 宮沢遥河はフッと微笑むと、那南の頭を何となく撫でてしまう。 「…?!」 「あ、すまん。 久しぶりに撫でたくなる頭が目の前にあったから」 「…いえ?」 「また、図書室の本漁るだろ」 「ふふっ それは楽しみです」 那南と遥河が久しぶりの再会を果たしていると、凛月はムッとした顔をする。 「那南ちゃんは俺の彼女にするから、遥河は手ぇ出すなよ」 「ふぅん? 黒河付き合うのか?」 「いえ? 初対面ですし、それは無理かと?」 「な、何で?!」 「いきなりですし、その… 私、恋する気がないので」 「な、何で?!」 「何でって言われましても?」 「…わかった。 じゃあ、僕の事を知ってみる事から始めよう」 「は、はい?」 那南が何のことって顔をしていると、凛月は手を掴んでまた攫おうとしていた。
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