1、摩訶不思議な秘密の館

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――その頃。 「ヒメ様、ヒメ様……」 蛍の発光に導かれ。 漸く姿を見つけた少女たちは、感情の見えない声で連れ戻そうと前に周った。 「お戻りヲ、ご当主様に叱られてしまいマス」 d1286bb0-3384-46fa-93d5-ae55bce1ca9f 同じような台詞、同じような背格好で三様それぞれに言われると。 「お前たちこそ。そこからもう数歩たりとも後ろに下がっちゃならないよ……こちらにおいで」 向かいに見えるはこの村、唯一の観光スポットである光蛍(こうけい)神社だった。 その鳥居の奥からは祭囃子や笑い声が薄ら聞こえてくる。 しかしそれを阻むみたく。 整備されたであろう黒く平らになったアスファルト、まだ引きたての白線が映えていた。 まるで〝お前たちとは住む世界が違う〟などと嘲笑うかのように。 対してこちら側は、何もかもを取り囲み隠してしまえるほどの大きく静かな森。 その木々が自由に根を張り陽光を求め伸びた陰に、女たちの住む館がある。 「前は神社(むこう)にも遊びに行けたんだけど。寂しいねぇ……」 ヒメは少女たちを手招くと、少し離れるよう言いつけ背に隠した。 そして綺麗に編み込まれた髪の一筋を抜き、その辺に転がる石に巻き付けて見せると。 「ご覧……」 にこり、と冷めた笑みが口元を型どり、その数歩先へ石を放る。 するとどうだ、アスファルトに出る手前、何もないはずの湿った土へ転がる石目掛けて、目もくらむほどの電光が。 身体の底に響くような音と共に勢いよく雷が落とされたのだ。 「ヒメ様、ソレは……」 石は黒く変色し、巻いた髪だけが塵となって粉となっていた。 「少し眠っている間に……招かざるお客が忍び込んだのさ」 「退妖師(たいようし)……」 「ああ。それにしたってご丁寧だね、妾たち屍体だけに効くような札でも埋まっているんだろうよ……この屋敷を囲むように」 見渡し、おろおろと右往左往と「スグご当主に報告ヲ」などと騒ぎ立てている。 「おやめ、余計な心配は掛けられない」 「デスガ……」 「お前たちを寄越したってことは、察しの良い夕顔(ゆうがお)辺りが足止めの気でも引いているんだろう? アレも知らせなくて良いって、そういう腹さ」 デモ、と繰り返し、パニックになっている少女たちの頭を撫でると。 「何処の誰かは知らないが……」 吹き上がる涼風にドレスを押さえながら。 「妾たちを安らかに眠らせてくれるのは、この世でただひとり。それを邪魔する者など……」 〝全て酔わせて。 骨の髄まで啜り堕としてみせようぞ〟 33bf6090-2d81-492b-8644-05c15309ba0b 得意分野じゃ、蔑み吐き捨てると、塵が舞う様を意地悪く笑い踵を返した。
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