夏の夜の訪問者

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 プリンターの近くを捜索すると棚の上に茶封筒が置いてあった。 「あったあった」  書類ケースに茶封筒をしまい、一応戸締りを確認するとベランダのブラインドカーテンが揺れていた。 「不用心だなあ」  窓を閉めてブラインドカーテンを下ろした。 「よし」  振り向くと立てていた梱包材がカタンと倒れた。 「……びっくりした」  梱包材を倒れない様に壁際の段ボールに移す。また背後で何かが倒れる音がした。 「な、何だ」  何かが部屋の中に潜んでいる。背筋に嫌な汗がすーっと落ちた。 「ニャー」  部屋の何処かから猫の鳴き声がした。 「え、マジか」  中腰になってそっとデスクの下を覗く。 「専務?」 「ニャー」  専務が開いていた窓から入って来てしまったらしい。そう言えば経理の柴田が誰もいなくなった後で夜遅くにこっそり部屋の中で猫に餌をやっているのを何度か見た。部屋の明かりを見て餌を貰えると思って来てしまったのかもしれない。 「どこだ?」
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