夏の夜の訪問者

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 また同じ神餌が欲しいと鼻を鳴らした。 「えー、あるかなあ」  ガサガサと引き出しを探っていると、ズボンのお尻に爪を立てられた。 「イタタタ! 止めろよー。一つだけあった!」  黒猫はシャーッと威嚇し、早くしろと荒ぶっていた。 「この仕打ち……」  クセになると言いかけて口をつぐむ。誰が聞いている訳でも無いのに。 「ほら、最後だからな」  黒猫は神餌をふぐふぐいいながら食べていた。 「ん?」  ベランダに大きな影が見えた。 「え、まさかドロ……」  その人物がガタガタと激しく窓を揺らした。 「うわ、何、怖い!」  黒猫がさっと三田の背中に隠れた。 「ぬうううううう」  その人物は無理やり窓をこじ開けようと唸りを上げた。 「わっ! 社長!」 「三田か!」  慌ててブラインドカーテンを上げ窓を開ける。 「お前、何やっとんだ」 「え? 社長こそ」 「俺は非常階段にいた専務に餌をやってたんだ」  軍手をはめた手には猫缶が入ったビニール袋とスコップを持っていた。ベランダ脇に非常階段があってそこでよく専務が寝ているという。 「……その猫」 「専務だと思って接待しちゃいました」 「ミーコ……」 「はい?」
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