来たれ、救世主!

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 ***  落ちものパズルのブロックは、みんな個性豊かな形をしている。細長い長方形だったり、L字型だったり、ゼット型だったり。  そんな中、吾輩のような四角いブロックは人間に厄介者扱いされがちだと知っている。真四角なので隙間を埋めることも叶わないからだ。逆に、常に待望されているのは細長い棒の形をしたブロック。使い勝手がよく、こいつが降ってくると人間達は嬉々として隙間を埋めにいっているんだろうな、というのがなんとなく想像がつくのである。  吾輩達は、操作する人間の姿を見ることはできない。  ただ、なんとなく人間達がどういう姿なのかとか、どういう存在なのかということは知っている。何で知っているのかはわからない。吾輩達を作った神様にそう刷り込まれているのかもしれなかった。――まあ、ここで言う神様というのは、ゲームの製作者のことであるわけだが。  人間達は、ブロックを積み上げて消し、積み上げて消し、を繰り返してスコアを競う。  当然、積み上げやすいブロックの方が歓迎されるに決まっているのである。 「お前よりも、俺の方がよっぽど嫌われてると思うぜ」  その日は、少しだけ雰囲気が違っていた。というのも、ゲームをプレイしている人間が、ゲームをポーズ画面にして席を立ってしまったからである。電源が入ったままなので、吾輩達にも意識がある。そしてゲームが止まっているので、新しく落ちてくるブロックも静止中。久しぶりに吾輩は、仲間とゆっくりお喋りをする時間を得ることができたというわけだ。  俺の方がよほど嫌われている、と言ったのは。まさに、吾輩の頭上から落ちてきている真っ最中の仲間だった。彼は、Zみたいな形をした灰色のブロックだった。 「お前は四角いブロックが一番人間に嫌われてるというけど、四角いブロックは隙間を作らないじゃないか。俺は違う。Zの字をそのまま地面に置いて見ろ、顎の下にも隙間はできる。それでいて、棒みたいに使えるほどでっぱってもいない。俺が落ちてくるとわかった時の人間のため息が聞こえるようだぜ」 「そういうものだろうか」 「そういうものだよ。スコアを伸ばしたい人間ってやつは、少しでも理路整然とブロックを積み上げたがるもんだ。隙間があると、その一段はどうあがいてもブロックを消せないままのこっちまうからなあ」 「それを言ったら、一番嫌われているのはH型のブロックじゃないか?1マス突起がないと、ぴったり嵌めることもできないぞ」
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