来たれ、救世主!

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来たれ、救世主!

 吾輩はパズルのブロックである。名前はまだない。てゆーか、多分一生名前がつけられることなんかない。  何故ならパズルはパズルでも、“落ちもの”パズルのピースだからだ。自分は正方形の形をした青いブロックである。  吾輩たちは、毎日毎日、ゲームが始まるたびにこの狭くて長方形のステージに落とされる定めなのである。ランダムに一列に並べられて、ゲームの進行と一緒に箱のような形のステージに落とされていくというわけだ。そして、仲間と一緒に積み上げられて一段揃ったら消されるというわけである。それを、えんえんと繰り返す。消されたところで、吾輩たちの意識が消えるというわけではない。自分自身を構成していたブロックが消えると、また見えない“舞台裏”スペースに意識が戻っていく。そして、またさっきと同じ姿に再生されて、何度も何度も落とされ続けるというわけである。  それが、吾輩たち、落ちものパズルの宿命にして真実なのだ。  ゲーム開始。  整列。  自分が落ちる。  仲間が落ちてくる。  消される。  再生。  整列。  自分が落ちる。  仲間が落ちてくる。  消される――以下、エンドレス。  人間がゲームをしていない時間は自由時間かと思ったら、そんなこともない。何故ならゲームをしていない時間は、ゲーム機の電源が入ってないのだ。吾輩たちの意識は、ゲーム機に大きく影響している。電源が入っていないと、吾輩達は仲間と喋ることはおろか、意識を保つことさえできないのだ。 ――ああ、退屈だなあ。  今日も今日とて、吾輩は箱の中であくびをするのだ。天井を見上げれば、がこん、がこん、と開いた窓から次の仲間が落ちてくるのが見える。そして、人間によって操作され、落下位置が確定する。吾輩もブロックなので、仲間が上から降ってきても別に痛くはない。痛くはないのだが、降り積もる仲間達に埋もれてしまうと箱の中の景色を見ることもできなくなり、消されるまで視界が真っ暗になってしまう。  非常につまらない人生だ。一体いつまで、こんなことが続くのか。人間がゲームに飽きるまで?ゲーム機が壊れるまで? ――この箱の外にも世界はある。人間達の世界が。  ちらり、と吾輩は人間が見ているであろう壁の向こうに視線を投げた。 ――行ってみたいなあ。というか、人間に生まれ変わりたい。いつも自由で、楽しいんだろうなあ。
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