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1 祭りの夜に
──人だ、人が混じっている
──例のおなごはともかくとして
──よいのか? 花祭りは妖の祭りぞ
──なぁに、ひめさまの楽しみが増えるならそれでよい
ばくばくと心臓が脈打つ。手足が重たい。殴られたこめかみが、ひどく熱を持ちだした。たまらずその場にしゃがみ込む。
俺の一挙手一投足に、人ならざる者たちの視線が絡みついている。
本当なら楽しい思い出になるはずだった俺の高二の夏の夜は、ろくでもない夜に変貌していた。
ミコト先輩が俺を庇いつつ、裏返った声で訴えた。因みに、先輩は、俺をここへ連れてきた張本人だ。
「もういいでしょ! お、お願い! 私を返して!」
その時、足音が聞こえた。
俺たちに集中していた視線が、雪崩を打つようにして、ある一点へと注がれる。
ミコト先輩と全く同じ顔をした浴衣姿の女──人の形をした人でないもの──が、満面の笑みで琥珀糖をくちにしていた。
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