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あの日から
あの日を最後に私は集まりに参加しなくなった。
数カ月後には新しい彼氏もできた。
同じ歩幅で歩いてくれる優しい人。
その数年後、彼が結婚するとあの幼なじみが
教えてくれた。私も同じ頃プロポーズを受けた。
もちろん答えはYES、彼となら幸せな家庭が
築けると確信できたから。
そして今、私は彼と二人の娘と四人、
大変だけど幸せな毎日を過ごしている。
今日は娘たちに浴衣を着せて毎年恒例の
花火大会に来た。喜ぶ姿がたまらなく愛おしい。
それでも、どれだけ年を重ねても、この日だけは
決まってあの夜を思い出しては胸を焦がしている。
誰にも言えない二人だけの秘密の夜。
美しく咲く花火なんかよりも濃く刻まれた記憶。
あの人はもうとっくに忘れただろうか。
あの日いくつの嘘をついて、どれだけの嘘を
あなたにつかせてしまったのだろう。
それが優しい嘘だと、わかっていた。
もう二度と会えなくなることも、自分が最低だと
いうことも知りながらお互いを求めあっていた。
夢や幻とも思えるようなあの夜を胸の奥にしまって
私も今日も今を生きていく。
あなたには、ありますか?
忘れられない夏の夜の思い出が。
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