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「ああ、マコトか」
サムの隣に立って、青い海の向こうを見る。
夏の夜は短い。でもその短い夜の間に、たくさんのことを気付かされる。
例えば、僕にはまだまだサムの知らない部分があるということ。妹が手術を受けるために、両親と一緒に海外にいること。いつも明るくて頼れるサムは、家族と一緒に闘っているのだ。そして僕は、サムが苦しいときに寄り添えるような存在にはまだ遠いのだと知った。
一年に一度のクリスマス。だけど、人それぞれのクリスマスがある。プレゼントをもらうクリスマス。プレゼントを届けるクリスマス。大切な人と過ごすクリスマス。生きるためのクリスマス。
「海って広いね。マコトは海の向こうから来たんだよね」
「そうだよ」
天気が良い。はるか遠く高い空と目下の海が出会う。水平線がくっきりと海と空を分けている。水平線の向こうも、海が続くのだ。
「でも意外と、飛行機ですぐだったりする」
「そっか」
だから、きっと届くよ。
この夏のクリスマス。今僕がここにいることは当たり前じゃない。
1年の留学だから、僕がここで生活するのはあと約半年。大切にしたい時間。
あと半年で僕はここを離れる。その頃、日本は夏だ。
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