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「そんなに大きくない町なのに、結局マコトに会えなかったね」
もうすっかり太陽が北の空を通る頃、サムが欠伸をしながら僕の住む寮にやって来た。
「サンタ・アルバイト、何時に終わった?」
「朝の4時前くらいかな。空が明るくなり始めていてかなり焦った」
「まあ、はじめはそんなもんだよ。次はもっと早くできる…って、来年はマコト、もういないじゃんね。まあ子どもたちにちゃんと届きさえすれば、大丈夫。さっ、パーティー行こ」
クリスマスの日は、学校は休みになる。人々は家で、家族との楽しい時間を過ごすのが一般的だ。暇な僕たちは、寮の一室を借りてクリスマスパーティーを開くことにした。寮で生活を送っているのは留学生ばかりで、そのほとんどが参加している。ちなみにサムみたいに、留学生ではないけれど参加している、っていう人も一定数いる。
「ちょっといいですか」
廊下を歩いていると、呼び止められた。思わず「あっ」と声を出したときには腕を掴まれていた。
「ごめん、先行ってて」
サムは一瞬不思議そうな顔をしたがすぐに「わかった」と歩いて行った。
腕を引っ張られながら人のいないところに移動する。相手は美人と有名なリアン───明るい場所で見るとよく分かった。
昨日道を聞いてきた子だ。
「どうしたの?」
「突然呼び止めてごめん。実は昨日のことなんだけど…」
「サンタ・アルバイトのこと?」
「うん。私と会ったこと、…誰にも言わないで。お願い」
リアンは、言いにくそうに、でもはっきりとした口調で言った。
「分かった。言わない」
理由を聞かなかったのは、真っ直ぐ見つめてくる目が綺麗で、必死さが含まれていたからだ。
じゃあね、とリアンは昨晩のように足早にパーティー会場を後にした。
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