サマー・クリスマス

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階段を降りてぶらぶらと歩いてみる。もう少し時間が経ってから、皆のところに戻ろう。廊下を抜けると開けた空間に入る。海の見える景色が良くて、普段は寮生の憩いの場みたいになっている。いつもは寮生の憩いの場みたいになっているけれど、今日は先客が一人いるだけだった。 「サム」 海の向こうを見つめていたサムがゆっくりと振り向いて笑った。 *** もうほとんどのプレゼントを配り終えた。クリスマス・イブの夜が更けてゆく。東の空には今日の太陽が準備万端、と待ち構えている気配がある。 「…だね。うん、…」 急いで地図を広げて、次の家を確かめていると、すぐそこの川からそっと話し声が聞こえてきたので立ち止まった。河川敷に座り込んでいる一人のサンタクロース。 その声の主は、サムだ。 「…そうなんだ。うん、こっちは朝の3時半くらい。今は話せる?…ああ、寝てるんだね」 いつも陽気な友人の真剣そうな声に、しかもこんな真夜中の電話に耳を傾けるのはまずい気がすると思いながらも立ちすくんでしまう。 「僕?僕は元気にしてるから安心して。友だちもいるし。…うん。明日の手術はどうか、がんばってって伝えておいて。うまくいくよ。クリスマスだから」 話が終わった後も、サムはしばらく真っ暗な画面を見つめていた。
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