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「初めて梓に会ったとき……挨拶のときに目が合った瞬間から、俺はお前に惹かれた。だから庭に向かったお前を追いかけたし、もっと話したい、もっと近づきたいと思って部屋に誘ったのだ」
勘違いを無くすため、言葉を重ねる竜輝。彼は全ての想いを話してくれる。
「梓を好きだと、愛しいと思う心は年々増していく一方だった。……だが、招の俺への心酔っぷりを見ると梓が欲しいとは言えなかった。そのせいで妹のようにしか思っていない従妹を婚約者に決められてしまったんだ」
竜輝の言葉の一つ一つを身に沁み込ませるように聞いた。
もう勘違いはしたくない。その思いから、彼の言葉を真っ直ぐに受け止める。
「嫌われたと思っていた。だから想いを封じて龍としての役目を全うしようと思っていた」
だが、と続ける竜輝は両手を伸ばし梓の頬に触れる。
その存在を確かめるように包み込み、溶けてしまいそうなほど幸せそうな笑みを浮かべた。
「こうして会って、触れて。それが無理だということを知った。……想いを隠し通すことなど出来ない。お前に俺以外の男が触れるなど考えただけで嫉妬に狂いそうになる」
涼やかにも思える淡緑の目に、確かな炎が宿る。
その熱くなった眼差しで、彼はもう一度告げた。
「梓、俺はお前が好きだ。……神和ぎとしてのお前を必要としているし、何より俺以外の男と結婚して欲しくない。俺の花嫁として、嫁いできてくれるか?」
「竜輝、様っ」
改めてされた求婚に胸が熱くなる。
憧れ、諦めたはずの想い。夢に見て、所詮夢は夢だと消えてしまったはずの願い。
それが夢で終わらず諦めなくてもよいものなのだと、やっと実感した。
「私も、ずっと貴方を想っておりました。想いを封じて忘れようとしたけれど、こうして再び会えたら想いは溢れて来てしまって……」
頬を包まれ、顔をそらせない梓は真っ直ぐ竜輝の神秘的なほど美しい顔を見つめる。
少しずつ早くなっていく鼓動に、胸が詰まって言葉を紡げなくなってしまう前に応えた。
「竜輝様、貴方が好きです。その求婚、喜んでお受けいたします」
頬にある彼の手に重ねるように手を添える。
重ね、交わる想いを確かめ合う。
無言で見つめ合い、言葉よりも雄弁に語る瞳が交わる。
互いが互いを求めているのを感じて、自然と唇が触れ合った。
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