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4月、入学式。
昨日雨が降ると予想されていた入学式は、晴天の下迎えることになった。そこらじゅうの木に桜が咲き誇り、風に乗った桜の花弁が散っている。学校前には写真待ちであろう大勢の人達が、その光景を眺めながら談笑に浸っていた。…周りから聞こえてくる話し声や生活音がやけに大きく聞こえてきて、なんだか心が熱くなって。
…それで、やっと自分が高校生になったんだと改めて感じた。
「梓見て!学校前の桜、とっても綺麗よぉ!…写真、あんたスマホあるでしょう?撮りなさいね」
…お母さんも随分楽しんでいるようで、自分以上に楽しんでいる様子が少し、嫌だ。
……それにしても、大人のくせになんで桜一つでこんなにも嬉しそうにするんだろうか。それくらいなら食べ物食ったほうがマシ、花より団子だ。
「…そこまでして目の前の綺麗な桜撮りたい?家の庭にある桜でいいじゃん、毎日見れるし」
そう言うと、お母さんは「そうじゃなくてぇ」とぷんぷん怒って見せた。…よくわからない人だ、今に限った事じゃないけれど。
ふと、目の前を桜の花びらが過ぎる。風が私の顔を撫でた。陽の光が桜の花びらに重なっている、そんな風景は今までにも十分に見ていたはずなのに
___何故か、特別な意味があるかのように感じる自分がいた。
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