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「お届け物です」
やっと来たか、と思う間すらなく音の主は用件を告げた。
男のようだが、ドア越しに声がくぐもったのか、若いとも老けているとも聞き訳がつかない不思議な声であった。
にしても一体何であろう。通販など利用していないし、食事の宅配も注文していない。
訪問販売か、はたまた怪しい宗教の勧誘か。であれば無視しよう。
だんまりを決め込もうと思ったところで、いや待てよ、実家から何か送ってきたのかもしれないと思い直す。去年もナスやらトマトやら、畑で獲れた野菜をたんまり送ってきたことを思い出した。
腹も減っていた。トマトだったら切って塩でもかけて食べよう。
男は重い腰を上げると、淡い望みをかけてドアを開けた。
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