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中学生の時はまだ、世間とも馴染みが薄すぎた為、古谷家も志門を心配したのか、初めから参加しない意向を伝えていたのだが、高校生にもなるとそれもどうかと思われているようだ。
古谷志門にとっては、少々不安が湧き出てしまう行事が、近づいて来た。
高校二年の秋、この学園は文化祭の前に、修学旅行が予定されている。
その行事に無関心だった志門に、真顔で問いかけたのは、最近親しくなった篠原和泉だった。
「お前、旅行は参加するのか?」
「? 旅行?」
「……修学旅行。来月だろう?」
「文化祭の準備で参加不可は、駄目ですか?」
「駄目だな。それじゃあ、オレたちも参加できねえだろ」
文化祭の準備も、そろそろ始める時期だが、それを言い訳にするのなら、喜んで参加しない奴も、少しはいるだろう。
「オレも、京都に行くなら気心知れた奴らだけで行きたいよ。好き好んで学校の行事で行かなくてもなあ」
集団行動は、面倒臭い。
和泉もその考えを持つ少年だが、他の二人はそうではなかった。
「教育の一環で行けるんだから、多少の不便さは目をつむらなきゃ」
「そうそう。堂々と親の金で、遊び倒せるんだから。チャンスだぞ」
土産は何か所かいるだろうが、数物の菓子類を数箱買って置けば形になるだろうと、市原凪と高野晴彦は今から浮足立っている。
一応、行く方向で班決めされ、不安を胸に秘めながら帰宅した志門は、一週間悩んだ末に古谷氏に参加の意向を告げた。
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