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夏の夜風が優しく吹くと、風鈴が涼しげな音色を奏でた。ロッキングチェアが、優しく揺れる。そこには確かに母さんが、座っていた。
『母さん!』
僕は裸足で、庭に飛び出していた。来年、中学生になる僕は、さすがに照れくさくて、その上に座ったりはできなかった。すぐそばに立っても、何を話せばいいのか、わからなくなった。
母さんもまた、何を話せばいいのかわからないのか、少し照れたような笑みを浮かべていた。
『僕、中学生になるんだ』
そう言った僕に、母さんは嬉しそうに頷いてみせた。
『また、来年も来てね!』
何かもっと、伝えたいことがあったかもしれないけれど、うまく言葉にできなかった。でも、母さんの笑みを見ると、ちゃんと伝わった気がした。ふいに涙が溢れそうになって空を仰ぐと、小さな星たちが僕に微笑みかけていた。
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