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きっかけ
そんな生活を続けて、数年。夢の中に出てくる母さんはまだ、帰ってこなかった。もうすぐ、もうすぐ。と言っているのに、一向に帰ってくる気配がなかった。
でも、それを考えてしまうと。涙が止まらなくなる。だから、何も考えないようにした。
母さんに会いたい。その一心で。俺は毎日を乗り越えていた。だが、年々母さんに会いたいという気持ちが大きくなり、早く会いたい一心で俺はほとんどの時間を寝て過ごすようになっていた。夢の中でしか母さんに会えないから、俺はずっと寝ていたかった。
元々、趣味も欲も、なかった俺はほぼ毎日を寝て過ごすしかやることがなく、寂しいとか、苦しいとか。余計な事を考えずに済むのもあった。
この頃になると、紘さんは仕事で家にいない事が多く、メモ一枚のやり取りで、会話もなかった。まぁ、中学生に上がる前の話だから。1人でもどうにかなる年齢ではあった。
母さんと暮らしていた頃より、1人の時間が長くて。その時間が長ければ長いほど。寂しさや虚しさが増し、泣きたくなる。
「母さん…俺。頑張るから、だから…約束だよ?」
自分に言い聞かせた。母さんは絶対、帰ってくる。だから、今は耐えるんだ。と…
「もう少しだからね」
その言葉を信じて、俺は眠り続けた。
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