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序章 伝承
冬の海は美しい。空気が澄んでいる。
私は海に思いを馳せる。
幾重にも重なった水の層。光は水面に潰える。
熱を奪いながら、深く、深く、沈んでいく。
海の生き物達が私を見ていた。
気が狂いそうな程の膨大な水の中、
多種多様な物質が揺蕩っている。
私は海に八百屋で買った桃を投げ入れた。
次に、鮮魚店で買って捌いた魚の内臓を投げ入れた。
最後に、花屋で買った仏花を投げ入れた。
二拝、二拍手、一拝。
どうか成仏しますように。
「お、お、お、はとお、お。
おやまでとれたすいみつとう。
うみにむかってなげりゃんせ。
あかきいしをささげたら、
にれい、にはくしゅ、いちれいを。
こうべをたれていのりゃんせ。
つゆのひよりいづるもの。
よみよりきたるもうじゃなり。
みれんたたせてじょうどをしめす、
はすのはなをくわしゃんせ。
いのちめぐりてふたたびかえる。
おまえのもとにやってくる。
お、お、お、はとお、お」
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