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「たえばあちゃん達は何をしているの?」
「私達はお盆でこっちに帰ってきてるんだけど、今は運動会中なのよ」
応援している人達に混じり腰を下ろすたえの膝の上にのる。鬼の合図とともに走る彼らの様子は確かに運動会中の光景に似ていた。着物姿で駆ける姿を興味津々で眺める。
「はるちゃんたちに会えるのと、この運動会が一年の一番の楽しみなの」
「運動会って校庭でするんじゃないの?」
去年の小学校での運動会を思い浮かべながら陽翔がいうと、たえが「普通はそうね」と頭をなでた。
「私たちが集まれる広い場所っていったらお寺ぐらいなのよ。それで、さっきは借り物競争をしていたの。お題が孫だったから本当なら、夏彦を連れて来なきゃいけないのに、この人ったら間違えて」
「うっかりさんなんだね」
陽翔が言うと機嫌を損ねたのか片膝をついてそっぽを向いてしまう。
しばらくすると陽翔と同じように連れて来られたのか、洋服を着た人たちがいつの間にか増えていた。たえに聞くと、借り物競争のお題は子孫の誰かを連れてくるというものらしい。
「でもこうしてまたはるちゃんに会えて嬉しいわ。せっかくだからこのまま一緒に参加してくれないかしら。子孫参加の競技もあるの」
「いいよ! 僕この前のかけっこは一番になったんだ!」
陽翔がそう言うと二人は頼もしいと笑った。
こうして参加した幽霊たちの運動会は陽翔の知っているものと全然違った。
綱引きでは本気で引っ張り合っているうちに足をつくことを忘れるのか、空中に浮かんでいくし、障害物競走では墓石が変形ロボットさながらに移動する。行く手を阻むように道が変わっていくので応援する陽翔の方も力が入った。迷路のようなコースをたえが駆け抜けて、一位でゴールすると飛び跳ねて喜んだ。
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