夏夜の運動会

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 うっすらと空の下が白く明るくなる頃、運動会は終わりを迎えた。沢山いたはずの人々の姿がいつの間にか消えている。 「今日ははるちゃんと遊べて楽しかったわ。また機会があれば一緒に遊びましょうね」  たえの言葉にこれでお別れかと思うと、寂しい。うつむく陽翔の頭に茂が手を伸ばして、触れるとお経のような言葉を呟く。 「ここでのことは目が覚めたら忘れとる」 「こんなに楽しかったのに忘れるなんてやだよ!」  それに茂は今日がなければ、何も知らないのだ。泣きそうになりながら足に抱き着き叫ぶと、茂は「そういう決まりだ」と初めて見る困った顔で言った。  話しているうちに踏ん張らなければ飛ばされそうな強い力に引っ張られ始めた。魂が体に戻ろうとしているのだろう。戻りたくないのにどんどんそちらに引き寄せられる。  あまりに陽翔が離れようとしなかったからか、戻る直前に茂が思いっきり頭をくしゃくしゃにかき混ぜるように撫でた。 「泣かんでも半年もすりゃまた会える」 「それってどういう――」  顔を上げた陽翔が最後に見たのは手を振る茂とたえの姿だった。
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