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八月の半ば。
陽翔は父、夏彦の実家に遊びに来ていた。
田舎にある祖父母の家は山の中ほどの所にある。家の後ろは山の木々が生い茂り、前方にはすくすく育った稲が揺れる水田が広がるのどかな場所だ。
祖父母は久しぶりに訪れた陽翔たちを笑顔で出迎えてくれたが、去年まではいた曾祖母はいない。そのことを寂しく思いながら、父や母の真似をして仏壇に手を合わせる。壁に並んだ写真の中には真新しい曾祖母の写真が増えていた。陽翔たちが着いたのが夕方だったこともあり、寺への墓参りは明日の朝、叔母夫婦が着いてから一緒に行くことになった。
この日の夜は前々から陽翔がクワガタを捕まえたいと言っていたので、用意してもらっていた材料でバナナトラップを作った。バナナと焼酎、ドライイーストを混ぜ合わせる。それを加工したペットボトルに入れると完成だ。これを墓参りが終わった後で、祖父と一緒に仕掛けに行く。その後には花火とトラップ回収の虫取りが待っている。
明日が楽しみではしゃいでいると、もう遅いからと客間に連れて行かれた。客間にはいつの間にか布団が敷かれている。普段のベットとは違う畳越しの布団の感触がおもしろくて、眠らずにごろごろと転げまわって遊んでいたら母に怒られて押し込められた。電気を落とし家族三人で川の字になって横になると、眠れないと思っていたのがウソのようにあっという間に眠ってしまっていた。
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