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ーー大丈夫?
驚いた。
突然声をかけられて、横を向くと、そこにはいつの間にか少女が座っていた。
黒いおさげ髪に、頬にはそばかすがある、少したれ目な女の子。
そんな少女が、僕を見上げて心配そうに聞いてくるのだ。
ーー大丈夫?
ーーあ。うん。
大丈夫ではない。本当は今にも泣き出しそうで、胸が張り裂けそうな程、全てに傷付いているのに……。
ーーねぇ。ビー玉。綺麗だねぇ。
僕が持っているビー玉を指さして、少女がにっこりと笑う。
……その、はにかみながら首を傾げる癖は、……ずっと昔から、知っている気がするんだ。
ーービー玉、ね。わたしの宝物、だったよ。
ーー……え。
泣きそうな顔で少女は、両手いっぱいに抱えたビー玉を、愛おしそうに見詰めている。
ーー大好きだった人に、あげたんだ。幸運の、御守りだった。
ーー幸運の……。
まさか。
もしかしたら。
そんな、馬鹿な。だって君は昔、遠い昔に離れてしまって。もう二度と逢えなくなって、大好きだったのに、護ってあげられなかった。
あの娘ーー。
気が付くと僕は、真っ暗闇な公園のベンチで、恥も外聞もなく泣いていた。
号泣していた。
ーーずっと、大好きだったよ。……君。
ああ君は、あの日僕に、大事にしていたビー玉を一つくれたんだ。
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