第一章・ー居眠りー

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 ーー大丈夫?  驚いた。  突然声をかけられて、横を向くと、そこにはいつの間にか少女が座っていた。  黒いおさげ髪に、頬にはそばかすがある、少したれ目な女の子。  そんな少女が、僕を見上げて心配そうに聞いてくるのだ。  ーー大丈夫?  ーーあ。うん。  大丈夫ではない。本当は今にも泣き出しそうで、胸が張り裂けそうな程、全てに傷付いているのに……。  ーーねぇ。ビー玉。綺麗だねぇ。  僕が持っているビー玉を指さして、少女がにっこりと笑う。  ……その、はにかみながら首を傾げる癖は、……ずっと昔から、()()()いる気がするんだ。  ーービー玉、ね。わたしの宝物、だったよ。  ーー……え。  泣きそうな顔で少女は、両手いっぱいに抱えたビー玉を、愛おしそうに見詰めている。  ーー大好きだった人に、あげたんだ。幸運の、御守りだった。  ーー幸運の……。  まさか。  もしかしたら。  そんな、馬鹿な。だって君は昔、遠い昔に離れてしまって。もう二度と逢えなくなって、大好きだったのに、護ってあげられなかった。  あの娘ーー。  気が付くと僕は、真っ暗闇な公園のベンチで、恥も外聞もなく泣いていた。  号泣していた。  ーーずっと、大好きだったよ。……君。  ああ君は、あの日僕に、大事にしていたビー玉を一つくれたんだ。
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