第一章・ー居眠りー

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 忘れちゃいけなかったのに。大事な宝物だったのに。子供の頃はあんなにも時間を忘れて眺めていたビー玉を、大切な物を、いつしか大人になるにつけ、なくしてしまっていたんだ。  僕は、君を、護りたかったよ。  ーーねぇ。もう大丈夫だよ。だから()()、こっちにくるのは早いよ。もう少しだけ、頑張ってみて。わたし、ずっと、待ってるから。いつか……君と、また、逢える日を……。  誰かに揺さぶられた気がして、がばっと飛び起きる。  そこは公園内。  真っ暗闇などではない。外灯がちらほらと在る、いつもの公園内だった。  ……寒気に身体を震わせる。  思わず自ら抱き締めようとしてふと、何かを握り締めている事に気が付いた。  ーービー……玉?  それはビー玉。中に青いマーブル状の筋を閉じ込めた、外灯の光を受けてきらきら輝くビー玉だった。  ーー御守りだ。  もう少しで死ぬところだった。  先刻までの出来事が、夢や幻などではなかったのだと、手のひらに残るビー玉が教えてくれる。  僕はまたしても泣いていた。  もう大丈夫だ。  どんなに辛い事があっても、もう大丈夫。  僕には御守りがある。  あの娘が護ってくれる。  まだ、そっちには逝けないよ。ごめんね。  そうして笑みを浮かべるとビー玉を握り締め、ベンチから立ち上がり家路に着いたーー。          ー了ー
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