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忘れちゃいけなかったのに。大事な宝物だったのに。子供の頃はあんなにも時間を忘れて眺めていたビー玉を、大切な物を、いつしか大人になるにつけ、なくしてしまっていたんだ。
僕は、君を、護りたかったよ。
ーーねぇ。もう大丈夫だよ。だからまだ、こっちにくるのは早いよ。もう少しだけ、頑張ってみて。わたし、ずっと、待ってるから。いつか……君と、また、逢える日を……。
誰かに揺さぶられた気がして、がばっと飛び起きる。
そこは公園内。
真っ暗闇などではない。外灯がちらほらと在る、いつもの公園内だった。
……寒気に身体を震わせる。
思わず自ら抱き締めようとしてふと、何かを握り締めている事に気が付いた。
ーービー……玉?
それはビー玉。中に青いマーブル状の筋を閉じ込めた、外灯の光を受けてきらきら輝くビー玉だった。
ーー御守りだ。
もう少しで死ぬところだった。
先刻までの出来事が、夢や幻などではなかったのだと、手のひらに残るビー玉が教えてくれる。
僕はまたしても泣いていた。
もう大丈夫だ。
どんなに辛い事があっても、もう大丈夫。
僕には御守りがある。
あの娘が護ってくれる。
まだ、そっちには逝けないよ。ごめんね。
そうして笑みを浮かべるとビー玉を握り締め、ベンチから立ち上がり家路に着いたーー。
ー了ー
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